1946年岡山生まれ・「船団の会」所属。
著者の後書きにーー思いと言葉と何かとがうまくぶつかり合って、あ!と自分で驚くことができたらーーとある。
柿買うて人に持たせてよく晴れて
上記の一句はそうした会心の作ではないのだろうか。それは意味から判断するのではなく、ただ上五から中七へ、そして最後のことばに繋げられてゆく語感による。
淡雪や竹に節あり枝のあり
明易し小樽に船の名を読んで
猟期果つ山繭ひとつ転がつて
えごが花降らす水辺にさつきから
その語感のよろしさは以上の句にも言える。これらには今を伝えるための言葉選びが、着実な写生によってなされている。ことに、一句目の「竹に節あり枝のあり」は粉雪の存在感を見せて、いいなーと感心してしまう。
笹舟に昼の蛍の匂ひかな
馬追がゐるから壁に日があたる
一句目の繊細さ。二句目の倒置法的表現。多彩な手法であるが、根底にいつも、作者を感じる。