今までの兼題

第1回第2回第3回第4回
第5回地球第6回第7回第8回
第9回第10回第11回第12回
第13回第14回第15回兄弟第16回
第17回第18回第19回第20回
第21回第22回第23回第24回
第25回第26回第27回第28回
第29回第30回第31回第32回
第33回第34回第35回第36回
第37回第38回第39回第40回
第41回広場第42回鉛筆第43回映画第44回路地、露地
第45回近江、淡海第46回時計第47回正座第48回手足
第49回引力第50回受信第51回凡人第52回書架・書棚
本棚・書庫
第53回進化第54回硝子第55回暗闇第56回猛犬
第57回坩堝第58回位置第59回青森第60回模様
第61回王様第62回四角第63回半島第64回懸垂
第65回全身第66回回転第67回珈琲第68回反対
第69回夫・妻第70回隣人第71回危険第72回書類
第73回眼鏡第74回午前・午後第75回人形第76回世界
第77回仲間第78回教室第79回椅子第80回阿吽
第81回土地第82回煙突第83回 第84回 
俳句投稿の受付は、終了いたしました。

今回の兼題の路地は誰にでも馴染みがあり、それをきっかけにして、過去の思い出がいろいろ引き出されてくることになる、そうした味わいが感じられる。だが、それだけに、似たようなイメージの句になりがちで、却って難しかったのではないかと思う。

虹を見に路地を出てゆく男かな 岩淵喜代子

虹には雄雌があり、色の鮮やかなものを雄として虹といい、暗いものを雌とし、?というらしい。暗い路地から出てゆく男は、憧れに向かっていくのだろうし、又、本来の自分自身を確かめに出ていくのかもしれない。(川村研治)

夏休み土蜘蛛捕りし路地の見ゆ 同前悠久子

土蜘蛛は地蜘蛛とも言い、樹の根元や垣根など、あるいは塀の下部などに細長い袋状の巣を作っている。子どもの頃、それを見つけると袋を壊さないようにそうっと引き出して捕まえたものだ。薄暗い路地に、そんな昔の思い出がふっと蘇ってくる。(川村研治)

早口で祭が好きで路地育ち   浜田はるみ

お祭マンボという歌が昔あって、確か美空ひばりが歌っていたと思うが、「私の隣りのおばさんは・・・お祭騒ぎが大好きで・・・」というもので、まさにこの句の人のようだ。路地という狭い世界の中で共に過した仲間は一種の連帯感のようなもので結ばれ、特別親しみを感じるのだろう。そんな人間関係が彷彿として楽しい。(川村研治)

打ち水や銀座の路地に眞砂女の碑 山内かぐや

眞砂女という俳人は自分自身の生き方を貫き通した人ということで、自分とは全く異なる世界を感じさせられるが、それだけに魅力のある人だったのだろう。銀座の店の跡がこのあたりということで、探してみたことがあるが、見つからなかった。作者は眞砂女に心ひかれるものがあるのだろうか。あるいは、故人に面識があるのかもしれない。その碑を訪ねたおり、丁度水を打った後で、しばし心地よく思いに耽っていたのだろう。(川村研治)

路地に棲む魂たちの茄子の花    阿部暁子

古くから路地として残っているあたりは、一種結界のような小世界の雰囲気が漂っているのではないだろうか。そうなれば、昔の住人たちが魂となってその辺に棲んでおり、みな子どものようになって遊んでいるのかもしれない。茄子の花の紫色が魂たちの安らぎの色のように思える。(川村研治)


予選句

路地ゆかば歴史町名涼み台ひろ子
月涼し路地を曲がりし靴の音五十嵐孝子
神楽坂遠回りする路地の裏五十嵐孝子
風通る路地裏奥の萩の径五十嵐孝子
炎天をさけて路地裏猫二匹五十嵐孝子
炎天や本読む女の指白し五十嵐孝子
炎昼の路地抜け出せば広瀬川石井圭子
雲の峰深く息つく京の路地石井圭子
幼の背追ひて氷屋路地曲がる石井圭子
前掛けの祖母のもぎたる露地トマト石井圭子
阿弥陀籤のやうな路地ゆく夏の蝶石井圭子
永き日の路地がいつしか貝塚に岩淵喜代子
祭路地まつり過ぎれば風の道岩淵喜代子
路地奧に夜干しのシャツのほのあかり岩淵喜代子
虹を見に路地を出てゆく男かな岩淵喜代子
路地いつも昭和の湿り朝顔も岩淵喜代子
蟹路地や海より濃ゆき茄子の紺宇陀草子
炎天や葬送曲の流る路地宇陀草子
路地奥の歯科医の門の凌霄花宇陀草子
朝顔の花咲く路地の外科医かな宇陀草子
一斉に鳴る風鈴や長屋路地宇陀草子
夏深し路地裏にある秘密基地及川希子
路地めぐるかつぎ地蔵に心付け及川希子
路地抜けて訪ねし家の木槿垣及川希子
十薬の繁り変はらず露地の裏及川希子
夏未明救急車来て路地灯す及川希子
高田馬場路地のあぢさゐ丈低き大豆生田伴子
夕顔の薄明かりして路地の奥大豆生田伴子
郷愁や打水の露地にほひける大豆生田伴子
彷徨へるごと薔薇の香の路地づたひ大豆生田伴子
路地灼くる安吾の棲みし家みえて大豆生田伴子
路地裏の地母神となる瓢かな岡本惠子
炎昼の路地呼び鈴へ応へなし岡本惠子
裏路地は八幡さまへ鉦叩岡本惠子
宵闇の路地自転車の灯の軋み岡本惠子
路地ひとつ折れて銀河へ近づけり岡本惠子
青柿や露地に祀らる地蔵尊河邉幸行子
露地抜けて行く子らのこゑ浦まつり河邉幸行子
無花果の実を所望せり路地草履河邉幸行子
八朔や籠の百円露地野菜河邉幸行子
地蔵盆果てたる露地のおにごつこ河邉幸行子
月島の路地抜けてゆく雲の峰川村研治
路地に入るほうたるひとつふたつかな川村研治
夕焼けの路地真つ暗になりにけり川村研治
揚花火路地かけぬけてゆく子あり川村研治
路地奥のピアノ教室天の川川村研治
夏夕べお猫様のみ通る露路木佐梨乃
肌脱ぎの夫が男の露地栽培木佐梨乃
雲の峰路地の向こうがトキワ荘木佐梨乃
トキワ荘跡への路地に日の盛り木佐梨乃
路地を交ふ日焼けの深きウイグル人木佐梨乃
内露地に水撒く人のゐる気配栗原良子
露地栽培と小屋つづく炎天や栗原良子
静かなり露地栽培の終戦日栗原良子
盆見舞銀座の路地をすつと抜け栗原良子
路地裏のポスター残る夜の秋栗原良子
裏路地と揚羽の道は交叉して兄部千達
裏路地で会釈してゐる良夜かな兄部千達
待宵や路地の猫より誘ひ受け兄部千達
路地に人通る気配や西瓜切る兄部千達
裏路地の風吹き抜けて晩夏光兄部千達
風鈴のどこかで鳴りし路地の夕小塩正子
梔子や暗がりのあの路地の奥小塩正子
夕暮れや路地の鉢植ゑ茄子の花小塩正子
目印は路地にこぼるる百日紅小塩正子
路地ゆけば老舗の軒の釣忍小塩正子
水打つや繭煮る匂ひありし路地佐々木靖子
すててこでハモニカ吹くや路地の奥佐々木靖子
蚊遣りの香漂ふ路地を通り抜け佐々木靖子
松葉ぼたん咲かせる露地や長屋門佐々木靖子
どの路地も漁師のたむろ島の盆佐々木靖子
朝顔の老け始めたる午後の路地志村万香
桃に手を伸べて微笑む露地の奥志村万香
未だ青き露地の葡萄の連なりぬ志村万香
雑草を踏みゆく路地や夏の雲志村万香
炎天の元より咲きし夾竹桃志村万香
蝶の夢路地に覚むれば今朝の秋末永朱胤
曲がるたび見知らぬ路地や今日の秋末永朱胤
思ひ出が人影となり秋の路地末永朱胤
路地果てて路地に戻りし秋の昏末永朱胤
思はねど路地から路地へ秋の風末永朱胤
蝉時雨歩幅に合はぬ露地の石西方来人
大空に自在の路地や夏つばめ西方来人
露座仏に露地の桔梗を供へけり西方来人
キャンプはね館の露地に燃残り西方来人
道の駅即完売の露地西瓜西方来人
路地裏の水撒き終へたばかりなり高橋寛治
路地抜けて後ろめたさの夏の夕高橋寛治
路地奥へ祭り囃子の染みて染む高橋寛治
いつときの路地の簾に西日かな高橋寛治
半夏生路地から路地へと足早に高橋寛治
路地に入る風にふくらむ浴衣の子武井伸子
夏祭路地の二階の影うごく 武井伸子
路地ごとのをさな友達浮いて来い武井伸子
路地抜けてまた路地に入る青へちま 武井伸子
路地ごとに秋夕焼の溜りゆく武井伸子
夏夕立路地を迷ひて雨宿り辻村麻乃
人波をかき分け路地も夏祭り辻村麻乃
路地裏に残る暑さよ千住宿辻村麻乃
路地に祭り囃子の笛響く辻村麻乃
秋の暮間延び猫路地私す辻村麻乃
選ぶのは半夏生の白揺るる露地同前悠久子
夏休み土蜘蛛捕りし路地の見ゆ同前悠久子
露地裏に下駄の足音昼寝覚同前悠久子
優雅なる歩みの猫や路地涼し同前悠久子
南瓜煮る門前町は路地多し同前悠久子
乳母車路地を曲がればおしろい花中島外男
路地に消ゆ黒猫いづこ花火あと中島外男
路地裏の草むら踏めばトカゲの子中島外男
夕暮れの路地を飛び交ふ蚊喰鳥中島外男
月の路地バット振り込む男の子中島外男
路地裏の秋風鈴や色褪せぬ中村善枝
炎天に路地を染めゆく夏氷中村善枝
足首に路地の夕立ち騒ぎ立つ中村善枝
青嵐路地の美徳を凝り探る中村善枝
宵闇にだんだんと路地多くなり中村善枝
炎帝の石塀小路猫走る西田もとつぐ
ろーじ抜け後の祭に出会ひけり西田もとつぐ
図子暑し法華太鼓のほしいまま西田もとつぐ
折れ曲がる「天使突き抜け通」日傘揺れ西田もとつぐ
膏薬辻子昼寝の犬の歩き出す西田もとつぐ
ここからが路地の始まり濃紫陽花服部さやか
初秋の路地を貫く光かな服部さやか
秋蝶の過ぎゆく路地の陰日向服部さやか
野良猫の路地のくらがり百日紅服部さやか
風鈴や路地裏の角曲がるたび服部さやか
風死して路地のみ白く残さるる浜岡紀子
芙蓉咲く路地をひとつの舞台とし浜岡紀子
盆の月路地を離れしこともなく浜岡紀子
木洩れ日の路地のをちこち蝉の殻浜岡紀子
路地に待つ線香花火消ゆるまで浜岡紀子
早口で祭が好きで路地育ち浜田はるみ
白南風や路地に干物あふれをり浜田はるみ
路地照らす四万六千日の月浜田はるみ
金魚売路地を斜めに入りけり浜田はるみ
とびきりの路地の青空今朝の秋浜田はるみ
下駄の音重なり離れ路地涼し牧野洋子
路地裏の暗がり坂や昼ちちろ牧野洋子
エプロンにこぼれるほどの露地苺牧野洋子
路地裏の空気動かぬ夏真昼牧野洋子
蜩や路地の飛石渡りつつ牧野洋子
炎昼の路地に小猿の迷ひ込む宮本郁江
路地裏の貝塚登る蟻の列宮本郁江
だまし絵のパリの路地裏夏果てる宮本郁江
海の日や海の匂ひの路地の奥宮本郁江
夕焼や路地の奥からジャズ流る宮本郁江
俯瞰せり路地の網の目夏霞山内かぐや
路地裏にあぢさゐ行脚のひと日かな山内かぐや
坂道を下りて路地裏桜桃忌山内かぐや
路地裏に文楽の道みみず鳴く山内かぐや
打ち水や銀座の路地に眞砂女の碑山内かぐや
五月来る赤きポストの似合ふ路地山内美代子
マンホール並ぶ暗渠の路地灼くる山内美代子
揚花火両端切つて路地の空山内美代子
潮風や夏の落葉と路地埃山内美代子
近道は路地のほそ道草の花山内美代子
白日傘いつしか路地に消えにけりあべあつこ
路地を行く塵収集車パリ薄暑あべあつこ
パリー祭ピアフ唄ひし路地酒場あべあつこ
路地に驢馬緑陰に飲むミントティあべあつこ
鰯焼く路地の煙やポルトガルあべあつこ
花茣蓙の爺に腰かけ路地の夕阿部暁子
灼熱の路地クラクションクラクション阿部暁子
夏の冒険路地を曲がれば元の路地阿部暁子
この路地は誰かの家路夕立やむ阿部暁子
路地に棲む魂たちの茄子の花阿部暁子
朝顔の並ぶ路地なら祖母の家新木孝介
路地裏の鈴を鳴らせば涼新た新木孝介
おぶはれて踊りの夜の路地曲がる新木孝介
路地裏の釣瓶落しや昼の酒新木孝介
月の夜の路地の奥へと猫消えて新木孝介